韓国語学習支援サイト 

日録 2013年
連載

2013.11.14(木)
 管理者の職場の一つである YMCA韓国語講座において、授業の後に質問を受けた。管理者の好む種類の質問である。

受講生:「このあいだ電車に乗っていて、韓国の人同士が話しているのを聞いていて...」


 きたよ、きましたよ。おそらく「×××って聞こえたんですけど、どういう意味ですか」という質問のはず。

受講生:「“ソンジャギ”とか何とか、そんな感じのことを言ってたと思うんですが」

やはり。
しかし、管理者のやはりという予想も、やはりここまで。何が飛び出てくるかわからないのがこの手の質問だ。
なんだ、ソンジャギって。

受講生:「何だか、学校がどうのこうのとか、よくわからないんですが」
>
よくわからないのは管理者だって同じであり、質問者だってもっとわからないからこそ、最後の頼みの綱(朝鮮語では비빌 언덕といいますよ。「使える朝鮮語」参照のこと)として質問してくださったはず。何と細く、頼りない綱であることでしょう。

受講生:「ということなんですが。どういう意味なんでしょう?」

 え、それだけ? それだけなの? あと何かこう、手がかりは?
と、問うてみてもしかたない。カギは「電車の中、学校の話題」。これしかない。これしかないのだ。

管理者:「電車の中ですよね...。あっ、あれじゃないですか。손잡이 。」
受講生:「ソンジャビ?」
管理者:「ええ、손잡이 。吊革って意味なんですけど。손 が手、잡이 は 잡다 から来てます。掴む物、くらいの意味です」
受講生:「(不得要領なお顔)うーん、最後は “ ビ ” じゃなくて、“ ギ ” とか、“ ŋi ” とか言ってたような」
管理者:「違う、違いますか...。電車の中でしょう? 吊革でいいことにしませんか?」
受講生:「学生みたいだったんだですけど」
管理者:「学生さんが電車の中でねえ...」

 しかたない。解決する可能性は低いが、考えられるハングルの順列ないしは組合わせを試みてみよう。

손작이 손자기 손장이

송작이 송자기 송장이

선작이 선자기 선장이

성작이 성자기 성장이

 솜(綿)と섬(島)は候補から外していいような気がする。学生が電車の中で「綿」や「島」という単語を使って会話を行う蓋然性を感じ取ることができないからだ。検索もいい加減で切らないと、きりが無くなる。
かといって、손 や 송 、선 、성 に自信があるわけでもない。

 脳内単語収納箱を検索するも、単語として成立する組合わせはヒットしない。わずかに「 선장 [船長] 이 = 船長が」というフレーズが検索されたが、何が悲しくて韓国から来ている学生が日本の電車内において「船長」の会話をするのか。あり得ないとは言い切れないにしても、その話題は考えにくい。

 奥の手を使うしかない。母音の向きを換えてみるのだ。ㅏ ⇔ ㅓ 、ㅗ ⇔ ㅜ 、のように。
子供騙しと言うなかれ。これは意外と有効である。日本語話者の耳には「ア [ a ]」と聞こえても、実際の朝鮮語話者の発音が「オ [ ɔ ]」のことだってあるのだ。
せっかく陰陽の両側面が設定されている母音の体系である。試して損は無い。

さっそく、高速かつ光速の検索と置換を脳内で試みる。......おっ!

管理者:「話していた韓国の人たちって、学生さんですよね」
受講生;「たぶん、そんな感じでした」
管理者:「そしたら、もしかしたら、성적이 じゃないかな」
受講生:「ソンジョギ?」
管理者:「ええ、ソンジョギ。성적이 って書きます。성적 = [成績] 、이 は助詞の “ が ” ですね。学校の成績の話だったのかも」
受講生:「(先ほどよりは納得できたかのようなお顔)なるほど、そうかもしれないです」
受講生:「そうかもしれないですよね。もう一生、ほんとうのところはわからないですけどね」

そう。もうこれから先、死ぬまで「ソンジャギ」の謎は解けないままなのだ。こうやって日々を送る人生の潔さと爽快さの中で管理者は生きている。
...それにしても、何て言ってたんだろうなあ、その学生さんたち。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 管理者の職場の一つである YMCA韓国語講座において(あ、この書き出しが意外と多い。なぜだろう)、2013年11月16日(土)の午前11時から午後3時の日程でバザーが行われます。詳細は上記リンクをたどってご確認ください。
ただ一つ申し上げることができるのは、抽選会の一等賞品がソウル往復航空券ということです。参加者は多くても200名から300名の間のはず。これは確率高いですよ。
もしご都合がよろしければお出掛けください。管理者も腕章をつけて場内をうろついております。何なら朝鮮語の学習相談にもお乗りします。



2013.09.10(火)
『 Eメールの韓国語 』
 綾小路きみまろ氏ならば、あれから四十年となるところですが、管理者はせいぜいのところ四ヶ月。
いつの間に直近の更新から四ヶ月も経ってしまいました。この間、管理者は暑さに苦しみ(エアコン無しの猛暑に消耗)、日々のあれこれに悩み(主に献立)、ときどき職場に遅刻する(ただし授業には遅れません)という、意外と普通の生活でした。あ、韓国研修の付き添いにも行って参りましたので、これについて語れば語れますが、それは本題ではありません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 弊共著『Eメールの韓国語』のモットーは「読者と版元に迷惑を掛けない本」であります。ではありますが、上記のような四ヶ月の日々を送る管理者に手抜かりが無いわけがございません。手抜かりというものは不思議なものです。どこが抜けているのか自分ではわかりません。これに類似した例として、「知らない単語を思い出すことはできない」という命題があります。そもそも自分で認識していたら手抜かりとは言えません。

 そんな管理者のもとに版元である白水社の編集者様からお手紙が参りました。弊共著『Eメールの韓国語』の誤植をはじめとした事実誤認を懇切丁寧にご指摘してくださった篤志の読者様からのFAXを編集者様が転送してくださったものです。編集者様の添え書きによると、「この方はいつもFAXで誤植などの指摘を送ってくださる」のだそうです。メールの本なのに、なぜメールではない方法でお送りになるのかは不明とのこと。

篤志の方には出版社経由でお礼を申し上げてくださるようにお願いしましたが、弊サイトの閲覧者の皆様にはこの場を借りてお知らせせねばなりません。
誤りを分類すると「単なる入力ミス」「分かち書きの不整合」となります。本質的にそもそも朝鮮語が変だという誤りではないのが幸いです。...当たり前か。
そこで、篤志の方からのご指摘に沿って確認した項目を新たに正誤表に追記いたしました。どうぞご覧ください。

  ●『Eメールの韓国語』【正誤表】 

 正誤表を充実させる作業を居室にて一人黙々と行う管理者の姿は、誰も見ていないから自信を持って申し上げますが、じつに爽やかこのうえありません。そして、明確な認識のもとに付け加えるならば、まだ何か手抜かりがあるのではないかと強く思うのですが、前言の命題のように、どのような手抜かりかは明確でありません。間違いがあったら直す、このように堂々と開き直るしか方法はありません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 せっかく久しぶりの更新なので、ご案内をひとつだけ。
管理者の職場の一つである YMCA韓国語講座 ではこの10月に新規開講のクラスが多数ございます。管理者も出講しておりますので、手抜かりの無い授業(生活に手抜かりはあっても授業に手抜かりは無いはずです。そう思わねばやってられません)をする管理者を見たい方はお越しください。



2013.05.26(日)
(※この5月26日の項目は、書いている途中で気力が途絶えてしまい、結論がありません。せっかくなので途絶えた形跡を今後の糧とするために敢えてアップします。)

 管理者の最近の楽しみは某料理番組のレシピを作ることなのはさておき、そういえば既に新年度ですね。何をいまさら。

 新年度の抱負を高らかに謳うことも、エイプリルフールにオチャメなウソをつくこともなく、あまつさえゴールデンウィークは強い意志を持って何もしないことに邁進した結果、管理者の朝鮮語への愛情はあいかわらず日増しに増すばかりです。そういう体質ですからしかたありません。
朝鮮語愛はともかく、小耳にはさんだ朝鮮語の四方山のお話や朝鮮語に関するお知らせを皆さんと管理者のために備忘録として書き留めます。より深い考察をご希望の方は管理者本人をお見かけになったら鋭く追求してください。管理者は一目散に逃げるか、喜んで尻尾を振って別の話題に誘導することでしょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 さて話は替わって、シュレッダーです。オフィスで不要な書類や、人にお見せしてはいけないような書類を細かく細く短冊状に裁断してくれる事務機器ですね。

 朝鮮語では何と言いますかね。
こういう話題は、管理者の職場の一つである YMCA韓国語講座において授業の合間の講師同士の世間話の際に不意に湧き出てきます。事務室にシュレッダーなんかあるから、朝鮮語話者の先生に確認してみたくなるわけです。だいたいにおいて授業後で頭がボウッとしていたり話題が途切れた時にこの手の話になります。これ、ちょっと問題があるんですよ。何しろ質問する方も答える方も頭がボウッとしています。

 シュレッダーって朝鮮語で何て言うんですかね...(なかば独り言として問いかける管理者)。
先日のことでした。いつもはテキトーに無視してくれるのに、なぜかこの日は朝鮮語話者の先生が管理者のつぶやきに付き合ってくれました。
ああ、ええと。こう口ごもるくらいですから、その先生もちょっとボウッとしていたんでしょう。管理者と同じです。お互い呆けた頭で、管理者はボウッと答えを待ち、相手はボウッと記憶をまさぐります。母語話者に質問すると得てしてこういうことになりがちです。母語話者を辞書代わりに使ってはいけないというのは、失礼だからでもありますが、意外にすぐに答えが出て来ないからです。

ええと、シュレッダーかな? ちょっと先生、それ英語じゃないですか。ああ、そうか。英語ですね。



2013.03.03(日)
 そういえば、いろいろ無理難題(=楽しい仕事)を頼まれたなあ、と思う煮物を煮る日曜日の夜。
そこで、これまでやらせていただいてきた頼まれ仕事をまとめてみようと思い立ちました。

 ドラマを観て何か朝鮮語に無理矢理からめて面白く、そして可笑しく、ハートがウォームになるような、それでいてきちんと役に立って、たねになるようなコラムなり文なり記事なりを書いてくださいね。あ、ペンギンのイラストもよろしくお願いします、という難関をくぐり抜けずに、横から回り込んだような文章をいくつか書いてきました。

 この「日録」や「使える朝鮮語」などに再録したものばかりですが、このサイトをご覧になる方の全員が全ページを閲覧なさるわけでもありませんから、思い立ったのを良い機会として、このたび 連載記事 として単独コンテンツにしてみました。
画面左のメニュー、新しいピンクのやつがひとつ増えてますでしょう? それが 連載記事 への入り口です。

 書いたけれどテキストが管理者の手元に無いものもあり、新味にかけるきらいはありますが、まとめてお目にかける形として常設いたしますので、是非ご覧ください。



2013.03.01(金)
 年度末シーズンですので、せっかくですからお知らせをひとつ。 管理者の職場の一つである 在日本韓国YMCA にて「韓国伝統楽器・舞踊教室発表会」が行われます。

●2013年3月9日(土) 午後2時30分開演
●在日本韓国YMCA 地下スペースY
●入場無料。どなたでもご入場いただけます。

韓国舞踊、カヤグム、チャングの受講生の方々が、一年間の(長い人は十数年の)修練の成果をお披露目するイベント。早春の一日、是非お出かけを。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ラジオを聴取しながらこれを書いておりましたら「...言葉が耳に慣れたからです。これが英語の...」というフレーズが耳に入ってまいりました。
ははあ、ス△ードラー△ングだな。聞き流して「英語耳」を作れっていう、あれだな。

 たしかにコマーシャルの言うように、韓国から帰ってきた後や、同僚の朝鮮語話者の先生と話した後、乃至はその最中に、耳が慣れるという現象を経験したことは管理者自身もあります。聞き流すことは一定の効果があるのは間違いありません。言葉は習うより慣れろ、ですか。

 さはさりながら、慣れるためには、その素材が必要です。何の素地も無いままに耳で聞いて言葉を覚えることができるのは赤ん坊くらいなものでしょう。大のオトナがそんな赤ん坊のような幸せな環境に身を置くことは不可能事です。ゆえに、聞き流すだけというのは、手垢のついた比喩で恐縮ですが、ザルで水を汲むようなことになりがちです。「聞き続けるだけで英語耳に」って、それ、ウソっぱちでしょう。聞き続けて慣れるために、その前段階での仕込みが必要であることを敢えてすっ飛ばした、英語に憧れている人のその憧れを利用した惹句です。

 沼地にいきなり柱を立てて家を作るような、そんな無茶をなさらずに、まずは基礎工事をお勧めします。基礎工事のうえに、構造のしっかりした骨組みをして、そのうえで断熱や防湿を施せば、素敵な住まいになるのです。
以上、朝鮮語を愛する皆様に愛されて九年目の「初級までの朝鮮語・初級から先の朝鮮語工務店」の提供でお送りいたしました。引き続き、朝鮮語クロスワードパズルをお楽しみください。



2013.01.27(日)
 私事ながら転居いたしましたが、それはさておき、朝鮮語であります。

 管理者の職場の一つである YMCA韓国語講座 では昨年4月から教材の一つとして韓国の延世大学 연세대학교 の『읽기』を使っています。総合教科書でもないし、会話の教科書でもなく、あえて読解、リーディングの教材を選択したのには理由があります。

 昨今、いや、いつの時代も、外国語を勉強するんなら話せてなんぼ、聞いてわかって会話ができなきゃ面白くないでしょ、というのが主流の風潮であります。そりゃそうでしょう。通じると楽しいですし、通じなくてはオマンマの食い上げになる場合だってあります。
では、そのために何が必要か。一義的には語彙と文法でしょう。単語を並べればどうにかならなくもないのですが限界があります。そこで通じるように単語を並べるためのきまりが文法です。いや、これは逆ですね。あれこれ調べたらこうなっていた、という調査結果をまとめたものが文法なのかもしれまれん。地図みたいなものです。見やすい地図もあれば、略図みたいなものもありますね。文法書も同様です。

 この語彙は「意味」「音」「綴り」の三点セットが揃ってはじめて「覚えている」と言えるものです。文字を持たない言語もありますから、こう言い切っては言い過ぎでしょうか。こと朝鮮語に関してはハングルという文字がありますから、「綴り」は無視できません。なぜなら、ハングルという文字で綴られた教科書なり、生の文書を教材として使う以上、読めないと勉強が始まらないからです。その地域で生まれ育つ中で、その地域の言語を身につけていく過程を経ることができないのが外国における外国語学習のネックであり醍醐味です。

 話がずれました。つまり、オール・イン・ワンの教科書では語彙が足りないのです。会話メインの教科書も然り。なので読解の教科書を使っているのですが、授業で文法や読解ばっかりやっているわけではありません。会話もやっています。会話と言ってしまうと語弊があるならば、会話の基礎をお伝えしています。上手な話し方や発音というのではなく、自分が覚えている語彙なり文法を駆使して、どうにか言いたいことを伝えてみようじゃないかというアプローチです。

 週一回ないしは二回という限られた時間の中でも、かなりの情報量を詰め込んだ授業をしています。いやあ、すごいなあ、授業を受ける皆さん。そんな皆さんの脳内収納には、もうほんとうに種々雑多な、じつに多くの朝鮮語の知識が詰め込まれています。詰め込みすぎて、収納したはいいけど、取り出せなくなってしまっている場合があります。この出し入れをスムーズにしてみたいわけですよ。ええ。

 実例を挙げます。ちょっと反則ですが、管理者が担当しているクラスで使っている『읽기2』から、ある単元の本文を抜粋させていただきます。一つの課の構成は「本文−語彙練習−内容についての質問−発展練習」となっています。授業では本文の部分のみを使っています。

『 연세 한국어 읽기 2 』 제30과「 한의원에서의 신기한 경험 」
 나는 오늘 친구들과 같이 눙구를 하다가 넘어졌다. 너무 아파서 걷기도 힌들었다.
친구는 그렇게 아플 때는 한의원에 가서 침을 맞는 게 좋다고 했다. 나는 침이라는 말을 처음 들어서 친구에게 침이 뭐냐고 물어봤다. 친구는 침은 바늘 같이 생긴 것인데 침을 맞으면 빨리 나을 수 있다고 말했다. 작년에 스키장에서 스키를 하다가 넘어졌을 때 한의원에 가서 침을 맞고 나았다고 했다. 친구는 학교 근처에 있는 유명한 한의원에 같이 가 보지 않겠냐고 했다.
 나는 친구와 같이 한의원에 갔다. 한의사 선생님은 이것저것 물어 보시고 발목을 만져 보셨다. 한의사 선생님은 나에게 발목을 많이 삐었으니까 침을 맞아야 한다고 하셨다. 그리고 발목이 많이 부었으니까 찜질을 하라고 하셨다. 내가 약은 안 먹억도 되냐고 물어보니까 약은 안 먹어도 되고 침만 몇 번 더 맞으면 된다고 하셨다. 그리고 며칠 동안 많이 걷지 말고 쉬라고 하셨다.
 나는 침을 맞기 전에 긴장을 많이 했는데 다행히 침을 맞을 때 별로 아프지 않았다. 30분쯤 지나니까 좀 좋아지는 것 같았다. 아주 신기했다.


 日本語訳は逐一付しませんが、概略は「バスケットボールをしていて転んだ。痛くて歩くのもたいへんだった。友人が有名な良い漢方の医者がいるから行こうと言った。鍼を打つと治るそうだ。医者に行ってみると、足首を挫いているから鍼を打つ、湿布をしろ、薬は飲まなくてもいいとのことだった。ちょっと緊張したが三十分ほどすると良くなったような気がした。不思議な経験だった」というものです。

 この本文を使って、ネチネチと爽やかに文法の解説を行います。 Ⅰ -다가、 Ⅰ -기 形容詞、間接話法、 Ⅱ '-ㄹ 수 있다、ㅅ変格、 Ⅰ -지 말다、 Ⅰ -기 전에、など、既出や新出の項目を、黒板への板書や別途作成のプリントを使って理解していただきます。解説は管理者、理解するのは受講生の方の役目です。プリントには作文練習もあります。

 あわせて語彙について、関連語や読み方( 한의사 [ 하니사 ]、足首=발목 / 手首=손목・팔목、転ぶ=넘어지다 / 倒れる=쓰러지다 など)についても語りを入れます。語るのは管理者です。このような漢方に関した内容の単元ですと、『東醫寶鑑』( 동의보감 ) を著した許浚( 허준 , 1537년?/1539년 〜 1615년 ) のエピソード(ドラマ含む)などに脱線することもあります。脱線しても結局朝鮮語関連のことにしか脱線しませんから、脱線とは言えないかもしれません。面白味に欠けるという非難は甘んじて受けたいと思います。

 若干の脱線を試みた後、やっと音読と日本語訳を行います。オーソドックスに、朝鮮語を音読し、日本語に訳してもらいます。調べがつかずによくわからないから発生する「意訳もどき」を極力排除しつつ、意味の把握に注力し、分かち書きなどにも配慮します。
この際に発音についても矯正を試みます。ただし管理者が行うのはナイスな発音への矯正と言うより、間違っている読み方を指摘することで、上手でなくても通じる読み方を提示することです。ㅏと書いてあるのをㅓと読むのは間違いですし、終声をすっ飛ばしてしまうのも良くありません。

 ここまでで何と120分もかけるんですね。爽やかさとねちっこさが炸裂する授業です。この本文に関しては不明な部分をとにかく無くしてしまうのが一単元の初回の授業の目的です。

 さて、次回の授業では前回勉強した本文を使って会話の練習をします(単語テストや作文のチェックも行います)。内容について朝鮮語で会話ができるわけです。いや、できる素地が整っているのです。

 フリー・トーキングが難しい段階であるからこそ、知っている言葉だけしか使えません。知っている言葉とお互いの共通の話題という枠を敢えてはめて、本文の内容についてのみ朝鮮語で質問します。国語のテストではありませんから、答えだけわかってもしかたないのです。単語で答えればいいってものではないのです。そもそもこのエクササイズでは原則として本文に書いていることしか質問しません。

 以下、授業風景を再現ドラマ風にお伝えします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 はい、ではね、この間やりました「 한의원에서의 신기한 경험 」、これを使いまして、あれこれ質問したり、会話したりしてみましょうね。
これ、一問目です。

Q1. 뭘 하다가 넘어졌어요? (何をしていて転びましたか?)

 どうですか?

A1-1. 농구. (バスケットボール)

 そのとおりですね。バスケットボールです。それはそうです。バスケットボールに決まっています。そんなことはわかっているわけです。それをどう答えられるか。どれだけ違った答え方ができるか。ここがポイントです。そうやって単語で答えられると立場が無いんですよ、私としても。すみません。

A1-2. 농구요. (バスケットボールです)

 お、ちょっと以上に良いですよ。その요ってのは、後ろに続くフレーズを省略するときなんかに使えますね。
でも、ちょっと短くないですか?

A1-3. 농구를 하다가 넘어졌어요. (バスケットボールをしていて転びました)

 はい、グッドです。そうですよね。いちおう私たち社会人ですから、文で答えたいですよね。
さて、同じような内容で、違う言い方はどうですか?

A1-3. ... (無言)

 あ、これは失礼しました。あまりムズカシクお考えにならないでくださいね。若干ニュアンスがずれますけど「バスケットボールをしている時、した時」くらいに言い換えても構わないんですよ。

A1-4. 농구를 할 때 넘어졌어요. あ、했을 때? (バスケットボールしてる時に転びました。あ、した時?)

 はいはい、そういうことですね。할 때 も 했을 때 も、どちらもいけそうです。ところで、その「あ」は朝鮮語ですね?
じゃあ、これをですね、連体形を使ってひっくり返してみましょう。「転んだのはバスケットボールをした時でした」。「転んだ」っていう連体形が、「の(←もの)」に掛かってますでしょ。朝鮮語も同じですよ。

A1-5. ええと、넘어진 것은 농구를 할 때였어요. (ええ、転んだのはバスケットボールしてる時でした)

 いやあ、いいわあ。連体形の後の 것 って、ちょっと説明口調な感じがしていいですね。相手と会話していて、最後にまとめるなんて時に使えそうです。あとね、「ええと」は 글쎄요 なんかにするとなおグーですよ。え? 恥ずかしい? ...まあ、そうかもしれないですね。でも、こっちだって恥ずかしくて、てれくさいの我慢してんですから、つきあってくださいよ。

 じゃあ、今度は今のを全部朝鮮語でやってみましょうか。私が質問しますから、答えてくださいね。

管理者:이 사람 뭘 하다가 넘어졌어요?

受講生:농구를 하다가 넘어졌어요.

管理者:아, 농구요?

受講生:네, 친구하고 농구를 할 때 넘어졌어요.


 ...あんまり面白くないですね。膨らまし方が足りなかったですかね。ただ、いきなり「 농구. 」って答えられるより、ちょっとは会話してる感じに近づいてます。

 さて、続きがあるんですよ。この人(A)と、お友達(B)のね、会話を再現してみましょう。この人のチング、お友達ね、いろいろ言ってますね。鍼打つと治るだの、スキー場で転んだだの、近くに有名な医者がいるだの。校庭で仲良くバスケをしている時のワン・シーンを作りましょう。まずは日本語でいいですから。
(ここで管理者と受講生の方々の間で、いかにもな、ありがちな台詞が作成される。「イテっ!」「どうしたの」「足挫いちゃったみたい」「じつは俺もさスキーしてて...」「医者行こうよ」「鍼、良いよ。治るよ」「鍼って何?」「普通、ここで転ぶか?」など、採用不採用を問わず台詞の候補が多数挙がり、談笑のうちにシナリオができあがる)

A:うわっ!

B:何、どうしたの?

A:イテテテテ...

B:何なに?

A:なんかさ、足、挫いちゃったみたい。

B:足? ええ、うひい、痛そお。お前、これ痛いでしょ。

A:痛いよ、イタタタ...

B:これさ、医者行こうよ。医者。

A:医者?

B:近くにさ、有名な鍼の、漢方あるから、行こ、な? 一緒に。

A:鍼?

B:うん、鍼。俺もさ、去年スキーしてて捻挫しちゃって、鍼打ったら治ったもん。

A:鍼って何なの?

B:鍼って、お前。鍼って、針、ニードル? みたくなってるやつ。歩ける?

A:うん、お、痛いわ、これ。うん、まあ、何とか。

B:近いからさ。大丈夫かな。ほれ、こっち...


 はい、できましたね。じゃ、これ朝鮮語でやってみましょうよ。って、いきなりは無理ですね。じゃ、XXさん、これ、この台詞、ちょっと訳してみてください。(以下、管理者のサポートにより、ありきたりな、それだけにいかにも使えそうな朝鮮語のオリジナル会話文ができあがる)。
 ...가깝다니까. 자, 이리 와 봐. 천천히 걸어.(近いってば。ほら、こっち来な。ゆっくりな)。はい、できましたねえ。どうです? 全部ご自分の頭の中にある単語ばっかりでできましたでしょ。できるんですよ、ゆっくりお考えになれば。
(ここで、管理者と受講生、受講生同士で、できあがった会話文を朝鮮語で演じる。もちろん黒板をチラ見しつつである。管理者は会話の順番を入れ替えたりしつつ受講生のチラ見を軽く阻止し、リアクションの瞬発力を養う方向でリードする)

 ...いいじゃないですか。モノホンっぽいです。やっぱり、相手の言ったことを繰り返す、おうむ返しに問い返すというのは大切ですね。一回だけ聞いてもわからないことだってありますしね。問い返す、聞き直す、まとめ直す、言い換える。これです。これが間接話法のココロ、連体形のココロですよ。脳みその中で、会話のシミュレーションをですね、なさるといいんですよ、ええ。妄想だって構いません。それでもダメなら眠って、それから新しい語彙なり表現なり覚えて増やしてけばいいんです。

 では、次のシーン「医者と私の会話」、作って来てくださいね。これ今日の宿題。では、おつかれさまでした。カムサハムニダあ。あ、CDの書き取りの宿題はXX番目のトラックですよ。じゃ、皆さん、さっさと帰ってくださいね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 上記の会話練習のくだり、長ければ一時間、短くても四十分くらいはかかります。いえ、時間をかけるのです。実際にも、今これを書いていて、なぜか二時間も経ってしまいました(休憩含む)。

 このシナリオの朝鮮語はどうなったのかと、気になるお方もいらっしゃいましょう。出し惜しみするわけではありません。答えはその時によって異なる場合があるのです。受講生の人数や習熟度合い、扱ってきた教材の到達進度などによって、エクササイズで扱う会話文の構成要素は異なります。ですので、ここでサンプルを挙げるのは可能ですが、それですと出来合いの会話教材とまったく同じで、結局覚えることができずに応用が利かないままで終わることを管理者は憂慮します。ケチでお出ししないんじゃないんですよ? いつの日か、機会がありましたら、このシナリオの進行に沿う線で管理者と朝鮮語で会話してみましょう。

 さて、管理者の再現能力が拙劣なため管理者の爽やかさ、礼儀正しさが上段では伝わりきっていないのが残念でなりません。
そんな残念な気持ちのまま、今日の仕事に取りかかります。寒さ厳しく晴天の冬の一日、洗濯日和り、予習日和り、煮物日和りです。どうぞ皆様、暖かくお過ごしください。


2013.01.01(火)
2013年の年賀状 初級までの朝鮮語・初級から先の朝鮮語
 새해 복 많이 받으십시오.
あけましておめでとうございます。
本年も弊サイトで暖かくお過ごしくだされば、これに勝る喜びはございません。
なにとぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

2013年 癸巳 계사 正月
「初級までの朝鮮語・初級から先の朝鮮語」管理者
白宣基 백선기 ペク・ソンギ 敬白

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 弊サイトも、九年目を迎える運びとあい成りました。昨年の今日は「年賀状を送るので欲しい人は連絡をどうぞ」という傲慢な呼びかけをしたところ、予想内の数の申し込みがあり、面倒くさい正月でした。ですので、薄味なのは仕方ないものとして、管理者が書き殴る今年の干支にて2013年のご挨拶といたします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 昨年はサイト管理者としての私に何があったわけでもないのにサイトの更新が滞りがちでした。物は言い様で、滞りがちなのではなく、滞っておりました。
今年がどうなるのかは管理者のみぞ知るわけですが、そんなことは皆様の知ったことではないでしょう。そうでもありましょうが、「更新が滞ってますが、どこか体調でも悪いのですか(ノロウイルスですか、お歳暮が少なかったら悲しいのですか、など)」のように、せっついてくださいますと、管理者がヘソを曲げる可能性があります。自分で自分がわからない、そんな年頃の管理者ですが、どうぞ今年もよろしくお願い申し上げつつ、今から新年の計を練りたいと思います。
では、また。


初級から先の朝鮮語  初級までの朝鮮語・初級からの朝鮮語