韓国語学習支援サイト 

物件番号002:
「カラオケ屋の勘定書き」
物件番号002:
「カラオケ屋の勘定書き」
  • 採取日:
    2016年7月末
  • 採取場所:
    ソウル特別市内のカラオケ屋
  • 手書きハングルの世界
     勘定書き。飲食した内容と数量、金額が書いてある紙のことですね。店の者は、極限まで情報量を削いだダンサーの肉体にも似た峻厳さを持つ紙を手に客に迫るのです。
    金を払え、と。

     今回の物件はソウル市内某所のうらぶれたカラオケ屋で管理者が入手しました。つまり管理者は客です。
    管理者がここ数年、夏場に帯同しているソウルでの短期語学研修期間に入ったお店です。研修の参加者の方たちと入ったカラオケ屋の勘定書きをご一緒に味わってみることといたしましょう。

     現物はハガキ大のメモ用紙の上部に殴り書き、走り書きしたものです。髪が薄く、顔色が悪く、頬のこけた店主が管理者に手渡してくれました。
     何かを四つ頼んだ合計が12,000ウォンであることを明確に示した、お手本のような勘定書きです。ビジネスレターもこのようにシンプルかつ明確でありたいものです。
    ちなみに、四人で入って一時間ほど適当に歌って、頼んだのはビール4杯のみ。一次会で飲み過ぎていたこともあって、こんなオーダー内容です。店主みずから持ってくれた缶ビール(HITEでした。他に従業員の姿はありませんでした)を飲んで、店主に退店する旨を告げて出てきたものが、これです。
     一段目の手書きハングル、どうですか?
    2번 후불
    (正の字で4を表示) 12,000
    2番 後払い
    (正の字で4を表示) 12,000
     数字の「2」とハングルの「그」は、間違いやすいかもしれません。日本語では「4」と「千」が怪しいのと好対照です。決して上手な字ではありませんが、全体的に初学者にもわかりやすく書き順を説明できそうな運筆です。

     後払いに当たる 후불 は、じつは日本語の「あと-はらい、あとばらい」に漢字を当てた「後払い」の漢字部分のみを朝鮮語読みしたものです。
    このような日本語由来の朝鮮語の漢字語は数多くあります。組み立て → 조립 [ 組立 ]、追い越し → 추월 [ 追越 ]、はがき → 엽서 [ 葉書 ] など。先払い、前払いは 선불 [ 先払 ] と言います。飲食店によっては先払い制の店もありますから、これは必須単語かもしれません。
    正の字で数を記録しているのも味わい深いですね。

     うらぶれた、わびしい感じのお店に入れて、なぜか嬉しいような気持ちもほんのり芽生えた管理者でしたが、ふと、紙を裏返してみると次のようなものでした。
    手書きハングルの世界
     これは...、サラ金のメモ用紙ですね。
    手書きではないので解読する気が起きませんが、下部に年利27.9%と書いてあります。高利、暴利と言えましょう。手を出す状況なら、危機的状況です。

     一部に漢字が使用されています。ソウル 서울 にあたる部分は「署亐」と表記されていて目を引きました。서 [ 署 ] はともかくとして、亐は何でしょうか。無理矢理調べたところ、漢字「于(ウ 우)」の異体字ということのようです。
    「署亐」を「서울」と読ませる荒技。この用例は個人のブログでひとつだけ見つかりましたが、詳細な由来は不明なままです。お許しを願います。単なる当て字の可能性があります。

     まずは、店主がサラ金に手を出していないことを祈っておきましょう。
    お、この業者の名前は「喜望대부」。대부 [ 貸付 ] も「貸し付け」からの流入でありましょうね。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
     今回の感想は、韓国の国語醇化運動(ハングルの皮を被った外国語を固有語に置き換える運動)は前途遼遠だ、字は汚くても読める、というものでした。

    他にも手書き物件が手元に数件ありますが、もっと、こう、インパクトがほしいところです。

    では、次回を乞うご期待。
    初級から先の朝鮮語  初級までの朝鮮語・初級からの朝鮮語